チャンス到来
プールが空いているって。
プール閑散、野菜高騰…長い梅雨、都心の日照不足最長に:朝日新聞デジタル
しとしと、じめじめ、ひえびえ――。梅雨の影響で、今年は記録的な日照不足となっている。プールなど夏向けのレジャーは低迷。農産物の一部が値上がりするなど、生活にも影響が出てきた。
関東を中心とした日照不足は、本州の南で停滞する梅雨前線とオホーツク海高気圧から流れ込む冷たく湿った風が原因だ。気象庁によると、東京都心は16日まで20日連続で日照時間が3時間未満。東北や関東、北海道でコメや果樹の生育に大きな影響が出た1988年の17日連続を更新し続け、61年の統計開始以来、過去最長となっている。
16日までの今月の日照時間は都心が計5・6時間と、昨年比4・8%。前橋市は計5・2時間(同4・9%)、宇都宮市は計6・6時間(同8・4%)となっている。
日照不足に伴い、低温も続いている。都心は昨年7月、ほぼ全ての日で最高気温が30度以上になったが、今月は一度も記録せず、16日までで最も気温が高かったのは29・1度。昨年7月23日、国内の観測史上最高となる41・1度を記録した埼玉県熊谷市でも最高気温は29・4度にとどまる。
気象庁によると、来週の前半から夏の暑さをもたらす太平洋高気圧の勢力が強まり、西日本から東日本の広い範囲で気温が上がるという。この時期に各地で梅雨明けする可能性がある。8月の気温は平年並みとなる見通し。
売れないビール
「こんなに人が来ないことは、今までなかった」。遊園地「としまえん」(東京都練馬区)は6月29日にプール開きをしたが、15日までの来場者数は2547人で、前年同期より95%も落ち込んだ。20日からは「ナイトプール」も始まる。担当者は「日中でもこれだけ寒いのに、夜に人が集まるかどうか」と心配そうに話した。
神奈川県鎌倉市の由比ガ浜海水浴場は今月1日に海開きをしたが、海水浴客はまばら。昨年の「海の日」は大勢の家族連れや若者でにぎわったが、市観光課の担当者は「統計はとっていないが、ぱっと見で去年の半分以下」という。
東京都世田谷区で12日から始まったドイツビールの祭典「駒沢オクトーバーフェスト2019」では、2千席の客席のうち1200席はテントで覆うなど雨対策をしているが、実行委員会によると、過去の開催年と比べて客足、売り上げは半分ほどという。担当者は「ぜひ足を運んで欲しい」と話す。
家電の売れ筋にも変化が。「ビックカメラ」によると、昨年のこの時期と比べて除湿器は2倍、布団乾燥機は2倍以上売れている。乾燥機付きのドラム式洗濯機も5割増しという。一方で、この時期の主力商品であるエアコンや扇風機は昨年を下回る。「夏が来ないので、買う気にならないのでは」と担当者。関東地方ではエアコンの出番も少ないためか、電力消費は低めだ。東京電力ホールディングスによると、7月平日の日中の使用電力は昨年、4千万~5千万キロワット台だったが、今年は3千万キロワット台で推移している。
東京消防庁によると、管内で熱中症の疑いで搬送されたのは274人(6月1日~7月15日)で、前年同期の1405人から激減した。ただ油断は禁物。担当者は「急に蒸し暑くなると、体が慣れていないので熱中症の危険が高まる」と注意を呼びかけている。
野菜にも影響が出ている。東京都練馬区の「アキダイ関町本店」。日照不足と低温の影響でキュウリの収穫量が減り、価格は上昇。先週は4本238円だった。16日は198円で店頭に並べたところ、次々と売れていった。秋葉弘道社長(50)は「仕入れ値は高いが、頑張って価格を抑えている」と話す。ナスも品薄で、価格が高騰。「ナスが大きくならないので、出荷がないようだ」と空いた棚を見つめた。「水菜やチンゲンサイ、ゴーヤやオクラも日照不足で色が薄い」という。
農林水産省によると、日照や気温の影響を受けやすいキュウリは東京都中央卸売市場の価格で平年より7割ほど、ナスは4割近く高くなった(13日現在)。一方、高原野菜のレタスやキャベツは平年並みか安めで推移する。担当者は「すべての野菜が高いわけではない。キュウリも日照りが戻れば、価格も落ち着く。影響は限定的では」とみる。
山梨県内にある観光農園は15日から「桃食べ放題」を一時中止にした。桃は日が当たると甘みが増すが春先の雹(ひょう)の影響も重なり、収穫量が大きく減ったという。来園者から「少し残念」「今年は大変ですね」と声をかけられるといい、担当者は「近年は空梅雨が多かったが、お天道様だけはどうにもできない」と晴れ空を願う。