CHASSESPLEENの日記

2018年2月4日に別府大分毎日マラソンを、山中先生から数秒遅れで完走し、燃え尽き、今後の方向性が定まらぬまま、憂いを払うべく綴る連絡帳。

渋すぎる

シウマイ弁当 攻略の極意 「まず小梅をずらし…」 おいしい食べ方、プロに取材し発信 市島晃生 :日本経済新聞

おかずを食べつくして、ご飯が残ってしまった……そんな食の失敗は誰しも経験があるだろう。真心込めて作ってもらった料理を最高の手順で完食したい。私は「食べ方学会」を立ち上げ、おいしい食べ方を研究し発信している。

食べ方を考える上で最良の教材は崎陽軒の「シウマイ弁当」だ。神奈川県生まれの私は幼いころから俵型ご飯にシウマイ5個が並ぶ横浜名物の弁当に親しみを持ってきた。シウマイ以外にも唐揚げ、筍(たけのこ)煮、鮪(まぐろ)とおかずが実ににぎやかだ。「ご飯対おかず群」という基本構図の中で、食べ手は実力が試されているといえよう。

ラジオや雑誌でシウマイ弁当に言及する著名人は多い。料理番組のディレクターをしている私は人脈を生かして放送作家グルメ漫画家、食雑誌の編集長、有名レストランのシェフら約20人の「食のプロ」に弁当を持参し極意を取材した。

酢豚を連想させるように、唐揚げとアンズを一緒に口に入れる。シウマイ半個分をご飯の上に乗せて握りにする。はたまた鮪の照り焼きを半分ほぐし、フレーク状にする。彼らにはいくつかの共通点が見られた。それらをいいとこ取りしたのが写真の順番だ。

初手は本家本元、崎陽軒野並直文社長の流儀だ。野並社長が好きという小梅を真ん中からずらし、塩気が染み込んだご飯からいただく。最後は小梅とお茶でしめる。ほっと一息ついたところでシウマイが1個残っていれば小躍りする。自分を満足させるためには演出も必要だ。

驚くことに彼らは食べ方だけでなく、フタの開け方からしょうゆの差し方まで持論を展開してきた。理解を深めるために包括的な調査をした。SNS(交流サイト)上で600人超にアンケートを取ったところ、意外な結果が明らかになった。

なんと最初に箸を付けるもので最多なのはご飯でもシウマイでもなく、箸休めと思われていた「筍煮」だったのだ。今までの取材をもとにした、食べ方学会が示す食べ順に自信を失ったが、筍煮には女性の支持が集まったらしい。一方、右2つ目のシウマイから食べ始める人は0人。そんな「幻のシウマイ」を最初に食べる人がいたら、ぜひご一報願いたい。

「三角食べ」というように日本人はおかずと汁物とご飯をバランス良く食べる習慣がある。だが無意識な食事はさびしい。昼休みに定食屋に入れば、看板メニューを注文しご飯とおかずと付け合わせの配分を計算しながら食べる。分からなければ店主に「どう食べますか」と聞く。大学時代から20年以上自分なりの「正解」を探してきた。

シウマイ弁当は関東ローカルだが、次に挑んだのは全国どこでも手に入る「たまごサンド」だ。ポイントはたまごの量。二等辺三角形の斜辺の真ん中にたっぷり、90度の角にはあまり含まれていない。パンとたまごのバランスを均等に保つため、45度の角から食べ始め、圧力でたまごを全体に行き渡らせる戦法を考えた。一人のときに試してほしい。

料理や名店に関する情報はあふれているのに、食べ方を掘り下げる本にはなかなか出合わない。そこで2017年に同人誌「食べ方図説」を刊行した。シウマイ弁当とたまごサンドに続き、カツカレー編も好評だ。カレーは究極の配分問題を突きつける身近な料理だ。

近年はインバウンドで、日本のソウルフードを前に戸惑っている外国人をよく見かける。実例から導き出された食べ順案内がお店の片隅に置かれている光景を夢見ている。(いちじま・てるお=テレビディレクター)